高齢でも働ける看護師事情

厚生労働省「平成29年就労条件総合調査」によると、医療・福祉事業所のうち71%で定年を60歳と定めており、一方60歳を超えても働く看護師が多いのが、2013年以降の定年事情です。2013年4月施行の改正高年齢者雇用安定法で、基本的に希望者全員を65歳まで雇い続けることが事業所に義務づけられたため、再雇用制度を設ける対応を行ったからです。また、中途採用の場でも看護師の採用難に伴い、体力と技術に問題がない限り、看護職へ応募する人の年齢を問わないとする事業所が増えています。逆に、紹介会社が事業所に対し高齢看護師の受け入れを打診するケースもあり、若手にこだわらない採用スタンスが浸透しつつあります。そのため、中には70歳近い看護師が常勤として採用されることもあるようです。

看護師の定年事情が変化しているもう一つの理由として、高齢者施設や訪問診療の場など、高齢者に対し看護サービスを提供する場面が増えていることが考えられます。若手看護師も、会話内での年齢差を感じさせないようなコミュニケーションに心がけていますが、年齢が近い看護師の方が話しやすいと考える患者もいるのでしょう。事実、若手看護師が対応すると「若造に何がわかる」と反発する患者でも、年配看護師だと「経験豊富だから安心だ」と受け入れるなど、対応者の年齢で態度を変える場面も散見されます。高齢者の心情に寄り添う力や、認知症対応・看取りなどの技術を若手看護師に伝承する面でも高齢看護師の役割は大きく、定年を過ぎても働く場を確保しやすいのが実情です。